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たにさんの現地観戦記-練習見学編

2004年1月30日 フィレンツェ・カンピーニ 

 昨日、20年振りとなる積雪(降雪はしばしばあるようだけど)のあったフィレンツェ。今朝からは晴天となり、市内に薄く積もっていた雪はすぐに溶けきったものの、緑色と白色が斑に混じり合ったフィエーゾレの丘の雪化粧が、格別に美しい。

 午後3時、チームの練習を見学しにカンピーニへ向かった。市内から車で30分はかかるインチーザが候補地となっている、新トレーニングセンターの建設計画が進んでいるため、ここでチームの練習を見学できるのはおそらく今回が最後であろう。世界的に有名なクラブの練習場にしては、あまりに開放的で、ファンとの距離が近いために、低迷期にここで練習するのは大変だなと思うのだが、いざここが無くなると言われると寂しいものがある。ただし、現行フロントの目指しているモダンフットボールクラブには、整った環境で集中して練習に打ち込めるトレーニングセンターは不可欠。カンピーニに慣れ親しんだファンは確実に嘆くであろうが、再びヨーロッパの強豪に返り咲くために、ノスタルジーやセンチメンタリズムを排除していかなければならない場面がでてくるのは、やむを得ないことである。

 何某かの会見があったのか、3時に予定されていた練習開始が遅れており、グランドにはまだ誰もいなかった。そういえば、練習場に向かっていく選手達を見たことってなかったな。ならば待つでしょ。と、数十分後、ようやくポツポツとトレーニングウェア姿の選手達が現れた。彼らは皆、スタジアム内のロッカーで着替え、練習内容についてのミーティングを行い、記者会見のある日はそれも済ませてから、スタジアムとカンピーニを隔てる道、ヴィアーレ・マラトーナを渡ってグランド・インする。ほぼ全員徒歩で移動するのだが、リガノーとカヴァシンだけはマイチャリに乗っていた。アタランタ戦で追った怪我の回復具合が心配されたボンバーは、ひたすら陽気な顔で、ママチャリ風のシティサイクル(だったような)でフラフラと輪を描きながら走行し、取り巻くファン達と言葉を交わしながらの余裕の入場。一方でミステルは、イタリアで一般的なスリム・スポーティー型を颯爽と乗りこなし、ファンから次々にかけられる激励の言葉に、笑顔で応えていた。デリケートな時期だけに、アンチ・カヴァ派からの野次が聞こえてきてもおかしくなかったが、幸いにもそういった連中は欠席らしい。

 選手用の入場門から、ファン用に設けられたスタンドへ移動すると、既にランニングが始まっていた。3列になって走る選手達の先頭には、キャプテンと共にヴィアリとフォンターナが。共に豊富なキャリアを誇り、過去の所属チームでキャプテンをした経験を持つ二人だが、合流から1ヶ月も経たない内に、早くもリーダーシップを発揮しているようだ。共に各パートにおいて軸となるべく獲得された選手だけに、良い兆候である。一方で、FW陣の軸であるリガは、ランニングも続くストレッチも、実にチンタラとこなす。息苦しそうな顔をしたり、ヘラヘラと笑ってみたり。ふと、ワールドユース時にテレビで見た、日本代表の練習における坂田の姿が浮かんだ。見た目のチャラさにおいては我らがボンバーに勝ち目はないが、共にピッチに入ると人が変わるという点で似通っているようだ。

 アップが一通り終わった後、チームはDF組とその他に分かれ、前者は4バックを組んでの4対6のライン練習、後者は集団での鬼回しを行う。4バックは、ペスカーラ戦のスタメンと思われる、サヴィーニ(途中からトーマス・マンフレディーニ)、ヴィアリ、デッリ・カッリ、マッジョ(右足に漢字のタトゥー@今やたら流行ってる)。やはりと言うべきか、ディフェンシヴィスタとの定評のあるミステルは、ことあるごとにプレーを止め、入念にラインの連動についての指示を繰り返していた。一方で、大集団での鬼回し組(しかもなぜかグランドの隅っこにかたまって行う)は、リガを中心に随分と騒いでおり、しばしば奇声が聞こえてきた。決して強豪とは言えないペスカーラが相手ゆえにリラックスしてしまっているのなら頂けないが、短期間で11人もの(翌日にはレオンを獲って12人となる)選手を補強したチームにとって、グループ作りは早急な課題。リガノーやディ・リービオらの「古参組」が、意識的に盛り上げていたのだと思いたい。

 そういえば、気になったことが一つ。メディカルチェックの済んでいないカルスを除いた全員の新加入選手が顔を揃えたこの日の練習だが、ルカレッリ、マスペロ、イヴァンといったところが参加していない。いずれもカヴァシンの下で構想外となり、放出の噂が出ていたものの、結局移籍できなかった選手達だ。このまま飼い殺しとなり、腐っていかなければいいんだけど。

 この間、GK陣はコーチの下で別メニュー。出席者は3人で、セハス、ロッカーティともう一人は不明。ここで我々の背番号1について一言。リガやヴリーザスと比べると明らかに小柄に見える彼だが、練習態度は真摯そのもの。大声でモMia!モと叫びながら、懸命にハイボールに喰らいつく姿が印象的だった。少し前、クルヴァ・フィエーゾレの最大サポーターズクラブ、コッレッティーヴォが、自サイトにおいて、このGEA所属のアルゼンチン人GKの誠意を疑う声明を出した。曰く、「彼は、いくつかの試合において決定的なミスをし、チームの成績を下げることで、カヴァシンへの不信感を煽り、自信と同じGEAに所属するグイドリンへの監督交代を促進しようとしたのではないのか?」とのこと。GEA(www.geaworld.net)とは、モッジjr、クラニョッティjr、タンツィjr、ジェロンツィjrなど、イタリアの財界、サッカー界の七光りによって運営され、150人もの選手・監督を抱えるマネージメント組織であるが、構成される面子から見てもわかるように、明らかに胡散臭く、マフィア的な香り漂う集団である。コッレッティーヴォは、早くからこのGEAとその父親達、特にイタリア最大の銀行グループ、カピタリアを率いるチェーザレ・ジェロンツィと、カッラーロやアバーテら現行のFIGCトップとの癒着を指摘し、GEA所属選手・監督の不買運動を行っている。このGEAの危険性は明白であるし、コッレッティーヴォの言い分にも尊重すべき部分は多いと思われる。ただ、サポーターが、しかも最大派閥のグループが自チームのGKの不正を告発(しかも証拠なし!)するのは異常事態であるし、彼らの一部は直接本人に会って真偽を問い質したと言う。それで思い出されるのはマンチーニ(彼こそはGEA傘下の象徴のような人物)辞任の引き金となった、元監督宅への深夜の訪問であるが、コッレッティーヴォには、しばしばこういった究極的な行動に出てしまう悪癖があるらしい。とにかく、僕個人としてはセハスの潔癖を信じ、実力的に大満足とはいかないものの、時折見せてくれるスーパーセーブを堪能したいと思う。

 さて、だいぶ脱線したが練習は続き、今日のメインである9対6をハーフコートに配置したフォーメーション確認に移った。攻撃のシチュエーション練習のようだったが、中盤の2枚(ピアンジェレッリ+フォンターナ)に入ったボールをサイドに開いた選手(ファンティーニor ディ・リービオ)に当てて、クロスまで持っていくごく単純なパターンのみ。この日のこの練習からだけだと、カヴァシンは攻撃パターンに関してジーコも顔負けの放任主義のように見える。(試合を見ていると、実際にそうなのかも、と思うのだが・・・。)ただし、より実践的なこの練習では選手の声もよく出るため、それを近くで聞けたのが興味深かった。特に、選手同士の呼び合い方。フォンターナの「ジミー」(同名の歌手がいるため?)以外はシンプルな呼び方が多く、名前系では「ジジ」、「アルフォ」、「セバ」、苗字系では「ファンテ」、「カモ」、「グラッフィオ」などなど。リガノーは、ストライカーにありがちな「ボンベル(Bomber)」とも呼ばれていた。アップ時にはたるかった彼も、この時にはだいぶ気持ちの入った顔つきをしている。日曜は頼んだよ!

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